
このたび平成21年度「献血推進功労者表彰」が岐阜市で行われ、当社が「岐阜県知事表彰」の授与を受けました。
毎年会社へ献血車がやってきます。
会社からは強制をすることはありませんが、今回の表彰の源泉となったのは、偏に社員一人ひとりの思いやりと温かさの賜であり、そのやさしさの底流には創業来培ってきた社風のようなものがあるように思えます。
これを機に「人と自然にやさしい」企業メッセージを、より一層膨らませてゆく所存でございます。
さいきんは私個人の献血日程の折り合いがわるく、ご無沙汰ばかりですが、献血といえば想い出すことがあります。
****************************************
会社に献血車がやってきた。
献血申込用紙にぞろぞろっと社員の名前が列なった。
なかでひとり萎びたわたしが、
「六十なんですけれど、いいのでしょうか」といきなり訊くと、
「大丈夫ですよ」と看護師のオウムがえし。
ほんとうは六十をとうに越えているくせに、鯖を読んだのだ。長ずるにつれ、おのれの歳をはかるモノサシが短くなりたがる。
去年までは協力してくれなかった若い女子社員が、わたしのうしろに隠れるように並んでいて、「じつは注射が苦手なのです。けれど、もしかしたらこれで命の助かる人がいるとしたらと思って、我慢することにしました」と言って恥ずかしそうに会釈をした。
予備検査をすますと看護師が採取量を訊いてきたので、わたしは「四〇〇でお願いします」と云う。
「わっ! 四〇〇CCも採られるのですか? わたしは二〇〇です。そんなに血を採られて大丈夫なのでしょうか」と彼女が心細い顔をした。
「血を採るとね、すぐに新しい血が創られるから、体内の血液が新鮮になってよけいにいいんだよ。だいいちわたしのようなヨボヨボだって毎年やっているんだから心配ないよ」
わたしは口から出まかせを云う。
わたしたちは隣り合わせのベッドに並んで献血をした。
と見るに、女子社員の片方の手がわたしの袖口をつかんで、かすかに震えていた。
この一瞬よ永遠たれ!
たちまちわたしは魔法使いのお爺さんに変身だ。
これが血圧測定だったら、とんでもない数値に跳ねあがっただろう、そんな不埒を考えながら、わたしは年甲斐もなく顔を赤らめ、ずいぶん人生に得をした気分にもなっていた。
そののち彼女は結婚をされ、幸せそうな写真の年賀状が毎年送られてくる。
二人だった年賀状は、やがて三人になり、いまは四人になった。
彼女の協力した血もどこかで生きていることだろう。